鑑賞した日付:2010年12月2日頃
「日の名残り」  作者:ジェームズ・アイヴォリー
★★★★★
総合点:92点/100点

元々、僕は原作のカズオ・イシグロの大ファンであり、というか彼の「わたしを離さないで」という作品が非常に好きで、その彼の代表作である「日の名残り」の映画なので、これは見なければ!と思って見た映画。
話の内容がシニア向け過ぎてダメかと思っていたけれど、これはある程度の年になった人なら誰でも楽しめる作品だと思う。そして、アンソニー・ホプキンスやエマ・トンプソンの演技等もとても良いのだが、やはり原作が素晴らしいが故の良さを存分に堪能、感じることが出来た。
抑制されたストーリーと演技。
そして気品、品格をテーマにしていると言っても良いほどの、様式的な美しさ。

これといって盛り上がるシーンもないのに、なぜか何度も見たくなるような映像美もあります。

「わたしを離さないで」でもそうであったが、カズオ・イシグロのテーマは、
「立場に対する殉教、殉職」というようなところがあり、それが非常に美しく描かれていて良い。

主人公のスティーブンスが取ってきたある意味では盲目的な行動、仕事は、結果的には「過ち」だった・・という事になるのだけれど、でも、だとしても、じゃあ、どうすれば良かったのか?
それは誰にもなんとも言えない、正解の無い過ちであったように思う。
どうしようもないのだと思う。
それは政治的な意味でもそうだし、エマ・トンプソン演じるミセス・ベン(かつてのミス・ケントン)に対するほのかな恋心に対しても言えることである。
そう考えると凄く嫌な話なんだけど、誰しもそういう立場になった事はあるのかもしれないし、誰しも考えてしまう内容だと思います。

とにかく、「立場」というものについて、非常に考えさせられるし、
現実の日常でも、皆、もっとこの「立場」というものについて、考えていくべきだと思います。

あと、元祖スーパーマンとして人気を博したクリストファー・リーヴの遺作というわけでは無いが、落馬事故で脊髄損傷する前の、最後の方の作品でもある。(ちなみに、スーパーマンでの重要な共演者、ゴッドファーザーのドン、地獄の黙示録のカーツ大佐役で有名なマーロン・ブランドはクリストファー・リーヴの死の直前に亡くなっているらしい。さらに、地獄の黙示録のカーツ大佐の話は半分以上実話らしい。)

この映画や原作に関しては、他にも色々書きたいことはあるが、キリが無いのでこれくらいにしておこう。

やっぱりカズオ・イシグロは素晴らしい。
実に美しい世界観である。